情報システム要員とモチベーション(2)

 情報システム要員の仕事を魅力ある仕事に変えるキーワードは「情報」という言葉の定義の中に隠されている。「情報」をコンピュータ上で表現されたデータと狭く捉えて、情報システム部門の仕事をこのデータに関する社内外のニーズに応えることと考えたとしよう。そうすると、情報システム部門の仕事は街中を流しているタクシーのドライバーの仕事と変わらない。
 タクシーを利用する場合、利用者はドライバーに行く先を告げる。ドライバーの自由になるのは、せいぜい目的地までの途中で、どの道を通るか位だ。なれたお客になると、曲がる道まで指定してくるから、ドライバーの仕事は事故を起こさないで、車を運転するだけの単調な仕事となってしまう。
 どんな仕事でも、自分の裁量範囲が少ないと「やらされ感」があり、面白みのないやりがいのないものと感じてしまう。情報システムの仕事くらい、やる人間の仕事の捉え方によって、裁量範囲が広くなったり狭くなったりする仕事はない。ユーザ部門に言われるとおりに、新しいデータを画面の指定された場所に表示するだけならば、それが原子炉を運転するためのシステムであっても、スーパーのレジのシステムであっても変わりはない。情報システムを担当する人間が実務に貢献しているという実感を得ることは難しく、仕事へのモチベーションも上がらない。
 もし情報システムを担当する人間が、利用者の真のビジネス上の課題や要求を理解して、その解決を一緒に考えようとするならば、状況はすっかり変わってくる。ビジネスプロセス上のどんな変更から新しいデータを必要としているかを正しく理解できれば、画面上への表示ではなくてアラームを鳴らす方が、より効果的なことも提案できる。場合によっては、情報システムを変更するのではなく、人間系の仕事の手順を変える方が効果的なことを提言できることだってあるはずだ。
 タクシーのドライバーで言えば、観光ガイドに載っているよりも美味しいお寿司屋を推薦したり、場合によってはタクシーではなく地下鉄で行くことをお勧めすることで、利用者に喜ばれることだって考えられる。
 こんな風に、情報システム部門が企業の中で真に「ビジネスに役立つ情報活動」という「情報」の本来の定義に立ち返って、ビジネスを支援するという立場に立つためには、情報システム部門の人間はユーザ部門に負けない位のビジネス知識を日頃から習得し、自社のビジネスが今後どんな方向に向かっていくのかまで、常に頭に入れておく必要がある。
 そして情報システム要員が頼りがいのある「情報活用ソリューション」を提言できる社内コンサルタントとして認知された時、情報システムの仕事を3Kなどと呼ぶ人は社内から消滅していることに違いない。 K

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投稿者:KAINOSHO [ 管理者編集 ]

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