大リーグの松井秀喜選手がワールドシリーズで活躍し話題となっていますが、松井選手をCMに起用しているコマツの会長 坂根正弘氏のお話を東京工業大学のMOT特別セミナーでお聞きました。
演題は「IT活用による新たな顧客価値創出〜製造業のサービス化」です。コマツでは、企業価値を「社会とすべてのステークホルダーからの信頼度の総和」と定義し、「コマツでないと困る度合いを高めること」をブランド構築の目標としています。
そのために、顧客とコマツとの関係を次の7段階に区分し、その段階を高めることを企業活動の目標においています。
ランク7 コマツなしではビジネスが成り立たない、コマツと一緒に成長したい
ランク6 コマツに何かしてあげたい、コマツと一緒に何か作りたい
ランク5 これからもコマツを買い続けたい、一番頼りになる
ランク4 コマツは期待どおりだった、買ってよかった
ランク3 コマツを買って損はしなかった、他と同じ位だ、でも大丈夫かな?
ランク2 コマツの話くらいは聴いてやろう
ランク1 コマツは付き合うに値しない
BtoB比率100%の同社では、ブランド戦略は「売れ続けるための戦略」でなければならないと考え、マーケティング活動のポイントを「取引拡大」から「関係性強化」に移し、上記のような区分を設けて、顧客企業におけるコマツの存在理由を高める活動を進めています。
同社が幅広いステークホルダーとの関係で重視しているのが、信頼性を高めるための「経営の見える化」です。そのため、経営トップ自らが適切な情報開示を行い、説明責任を果たすことで、「サプライズ」をなくすことが実践しています。本社や工場など全世界の社員との3ヶ月に1回の「社員ミーティング」をはじめとして、顧客、投資家などすべてのステークホルダーに対して、トップ自らが情報発信することを義務付けているとのことです。
演題である「IT活用による新たな顧客価値創出」に関し、同社のKOMTRAX(機械稼働管理システム)を取り上げていました。KOMTRAXは、「仕事がないから」と言って不当に支払いの繰り延べを要求するアジア地域などの業者への対抗手段としても有効で、コマツ自体にとってもメリットが大きいそうですが、機器の稼働状況を常時把握できることで、顧客に対する保守サービスを飛躍的に向上させることが可能となり、「お客様自身のビジネスの見える化を支援する武器」としても利用して頂くことで、コマツのブランド価値向上に貢献しているとのことでした。
そして、ITを活用したサービスイノベーションのポイントを、「情報を価値に変えること」であると説明されていました。同社は経営方針の現場への展開を、企業のグルーバル化にとって欠かせない要素のひとつと捉えていますが、坂根氏自身は「トップダウンとミドルアップ、ミドルダウンの組み合わせ方」に一番気を付けているそうで、「本質的な問題が何かを上が繰り返し言わないとだめ、でも細かく言い過ぎるとミドル(課長クラス)が待ちの姿勢になってしまう」と、その実務経験の中からの苦労をお話頂きました。
IT活用と企業ブランド作り、そして社員意識改革、どれも繋がっていることを実感できた有意義な講演でした。 K
投稿者:KAINOSHO [ 管理者編集 ]
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