成果主義の功罪

 インナーブランディング活動を全社的に展開していく中で必ず課題になるのが、「個人の業績評価とブランド構築活動との関係」です。
 インナーブランディング活動は、ブランド構築をマーケティングなど特定の部署の仕事と考えることなく、全社的な取り組みとして進めていく活動です。そのため、全社的なブランドのあるべき姿実現のための施策は、各部署の施策として展開され、さらには各部署の社員一人ひとりの目標や行動指針として位置付けていく必要があります。
 そこで課題となるのが、個人の業績評価とインナーブランディング活動の個人目標との関係です。現在、日本の多くの企業では、個人の業績評価に目標管理制度を採用しています。インナーブランディング活動で設定する個人毎の目標を、この目標管理制度の目標とすることができれば、インナーブランディング活動の成果の評価も可能となると見ることができます。
 しかし、ここで気を付けなければならないのが、目標管理制度における業績評価が「個人目標の達成」ばかりを重視していないかどうかです。1990年代後半から我が国での導入が進んだ成果主義は、丁度我が国のバブル経済崩壊後の企業の人件費抑制への要望と重なり、賃金の抑制策としての側面があったことは否めません。その結果、成果主義の導入が個人の報酬を守るための「企業内個人主義の増長」を招いているケースを多く見かけます。
 インナーブランディング活動は、顧客への商品やサービスの提供に関わるすべてのインナーがベクトルを合わせて協力する活動ですから、「企業内個人主義」の存在は目標達成への大きな障害です。
 そのため、実際の企業でインナーブランディングを推進する場合には、インナーブランディングの個人目標と業績評価制度をリンクさせるための環境が整っているかどうか、具体的には業績評価制度の中に、個人目標だけでなく、部署全体が協力して達成する目標や、上司による部下の育成実績などの目標が、バランス良く組み込まれているかを確認する必要があります。
 あまり、早急にインナーブランディングの目標達成を業績評価に組み込むことは、ブランド活動の持つ「組織活性化」の利点を殺してしまう危険さえあるのです。
 インナーブランディング活動に取組まれる企業にとって、貴社の成果主義がうまく適用され、社員のやるき向上に繋がっているか検証し見直す、よい機会でもあります。 K

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投稿者:KAINOSHO [ 管理者編集 ]

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